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確率論 (2019年度)

お知らせ

第1回 2019.04.09

久保木先生の教科書の第1章の内容と、二項分布と正規分布の基礎的な事柄は、高校の数学Aと数学Bの範囲です。確率関数や確率密度関数も、高校で紹介されます。それらを、前晩に学んだため、急遽、成績には反映させない小テストを実施して、皆さんの数学の知識と、高校までの数学科目の履修状況を教わってみました。等比級数の和や、指数関数の定積分が、あまりお得意ではないような印象を受けました。またWebClassの出席アンケートから、数学Aと数学Bの履修率がとても高いことを教わりました。

講義の内容は、まず事象と標本空間の関係が集合論の基礎を用いて整理されることから、説明を始めました。集合論自体については、ベン図もあまり描かずに省略しました。

そして確率が付与される部分集合の全体を(完全)加法族と呼ぶことを宣言しました。久保木先生の教科書は、可算加法性から始まっていますが、工学部での講義と思い、あまり触れませんでした。理学部なら逆に、第1章と第2章は測度の話まで入り込んでいきます。ここまでが確率論の準備です。

確率の公理は、コルモゴロフによって定められたものです。

  1. 事象が起こる確率は0以上1以下
  2. 標本空間の中の何かが起こる確率は1 (Pr[Ω]=1)
  3. 可算個の互いに排反な事象列の和集合の確率は、個々の事象の確率の和

公理の1つめから例えば、確率を計算せよ、という問題を解いて負の値や1あるいは100%以上の数値を得たら、確実に誤りです。観測していて、標本空間の中のいずれかが起こる確率は1です。また、確率がそのまま足せるのは、対応する2事象が互いに排反(共通集合がφ)の場合のみです。

この3つと集合間の演算とから、加法法則や乗法法則が導かれていきます。

  1. ある事象が起こらない確率は、1-その事象が起こる確率
  2. 何も起こらない確率は0 (Pr[φ]=0)
  3. ある2つの事象の少なくともいずれか一つが起こる確率は、それぞれの事象の確率の和から、双方が同時に起こる確率を引いて求まる (加法法則)

ここまでで今日は終わり。第1章はおよそ既習得の内容でしょうから、例年より早めに進行しています。次回は、条件付き確率と周辺確率を定め、乗法法則を与え、ベイズの定理と章末問題を説明します。そして第2章に入ります。